蒼い鳥の歌

夢キャスと橘蒼星さんと夢女子CP中心の二次妄想置場です。苦手な方はUターン!

【蒼なな】夫妻とお別れをした日の出来事

響也の両親と別れを告げるため、ふたつの黒いクルマがゆっくりと走り出す。

響也を乗せた車も、あとを追う。

それを見送った人々も次第に散り散りとその場を立ち去る。

そんななかで、蒼星は動くこともなく立ち尽くしている。

雨は事故のあった日から降り続き、今日も朝からずっと小雨が止まないままだった。

 

その場にひとり、じっと立ったままでどれくらいたったのか、気づくと雨は止み、空には雲に切れ間も見えていた。

そっと傘をたたむ。

同時に視界がふとひらけたような気がする。

あたりをぐるりと見回すと、自分以外にも誰か、まだ傘をさしたままで立つ人がいた。

 

細く小さな身体が少女のようなそのひとは…ななかだった。

蒼星は彼女に歩み寄り、声をかける。

「ななかさん、一緒にいかなかったの?」

朝日奈の周りにいた近しい人達はみな、響也と一緒にふたりと最後の別れをするための場所へ向かっているはずなのに。

 

蒼星の声に反応し、振り向くななか。

黒く丸い目が驚いて蒼星をみる。

「…橘さん。橘さんも、一緒に行ったと思っていました。あ、わたしはもうすぐ仕事があって、それで。」

「ああそうか、仕事があるんだね。…俺はね、遠慮したんだ。おじさんおばさんには随分お世話にはなったけれど、やはり血縁ではないし、それにこんな時だから、今はカンパニー側の窓口に徹しようかなと思って。」

「…カンパニー…続けること、できそうですか?」

「う〜ん…うん、続けるよ。響也がそう言ったからね、夢色カンパニーはこれからも続くよ。絶対に。」

カンパニーは存続可能なのか。続けられるのか。まわりの人間が寄ってたかって口々に投げかける言葉や不信、不安をななかも遠巻きに見ながら感じていたのだと、蒼星は気がついた。

だから力を込めて、精一杯、努めて明るくそう言った。

強がりではあるが、これは本心だ。

ななかにも、その明るさに含みがあることは伝わるのだろう。少しだけ何か言いたそうな間はあったのだが、蒼星の明るく笑ったその顔と声音に、それを信じます…と応えるような、柔らかな笑顔で返した。

 

瞬間、サァ…っと、まわりの空気が一変したような気がする。

 

「ん…? あ、虹!ななかさん虹だよ!」

蒼星が指差し、ななかも同じ空を見る。

しばらく、ふたりは言葉もなくそれを眺めた。

 

 

 

 

そして虹が少しづつ薄くなり、ほとんど見えなくなってしまう。

 「あぁ〜…あっという間だったね。」

「…はい。」

「…きっとさ、おじさんとおばさんが…あの橋を…渡って、行ったんだ。」

 

不意に、とてつもないさみしさが蒼星を襲う。

響也のほうがツライから、そう思うと簡単には泣けなかった心が、突然壊れて涙が溢れる。

女の子の前なのに、みっともない…そんなことを冷静に思いながらも、涙が流れることを止められない。一度切れた心の堰は簡単には戻らず、肩を揺し、目は開けていられずに、ついには嗚咽まで漏れはじめる。こんなに泣くことが今まであっただろうかとおもうほど、蒼星はしゃくりあげ、顔を手で覆う。

そんな状態の蒼星の頬に、ふわりとした何かが触れた。

一体なにが触れたのか、確認しようと目を開けると、目の前には自分と同じく、涙を流すななかの顔があった。

いつの間にか、蒼星は地面に膝までついていたらしい。

それを覗き込むようにしてななかがしゃがみ、涙でグシャグシャになっている蒼星の頬をそっとハンカチ拭っていたのだった。

 

「あ…うわっ。ななかさん!」

 

ななかは言葉を発さず、涙がこぼれるまま静かな笑顔を蒼星に向け、蒼星の涙をぬぐい続ける。

 

「ありがとう、もう、もう大丈夫。ハンカチも、ありがとう…このまま借りていい?洗って返すよ。」

ななかの手にあるハンカチをそっと包むように掴み、気恥ずかしく思いながらもそう申し出る。

「ひぇっ…わっ…あっいえ、わたしっ自分で持って帰ります!大丈夫ですから、どうぞ、今は…使ってください。」

ななかは今にも触れそうなお互いの手の近さ…触れなくても伝わるその手の温度にハッと我にかえり、盛大に照れはじめる。

今さっきまでの毅然とした態度はどこへ消えたのか、顔は耳まで赤くなり、勢いよく蒼星から距離をとる。

 

それでも突然大きく離れるのは失礼かと、グッと堪えて2、3歩離れただけにとどめた。

よくわからない気の使いかただが、ななかには精一杯の努力であった。

 

蒼星はそんなななかの百面相ぶりに呆気にとられたが、あまりの焦りかたに思わず微笑んでしまう。

自分と向き合って照れるななかに、少し嬉しいと感じる気持ちが蒼星にはあった。反面、申し訳ないほど縮こまってしまうため、心のなかでは「ゴメンね…」と、つぶやいたりもする。

 

 

 

そんなお話。

唐突におわる。