蒼い鳥の歌

夢キャスと橘蒼星さんと夢女子CP中心の二次妄想置場です。苦手な方はUターン!

【蒼なな】ファンレター

響也が主宰となってからのこと。

「虹の彼方に」からは2、3ヶ月ほどあとくらいのこと。

 

ななかは仕事とレッスンの少しの空いた時間を公園のベンチで台本を読みながら過ごしていた。

その場所に、蒼星がカンパニーの仕事でたまたま通りかかる。

蒼星は新団員の募集のチラシや新たにチラシを置いてもらう場所の新規開拓を兼ねて音楽系の店の集まる町ということでここに来ていた。

その道すがらでななかを見つける。

何かを真剣に見ているようだったが、蒼星は声をかけてみた。

顔を上げたななか。

一呼吸置き…自分に声をかけてきた誰かが蒼星だと気がつき、挨拶もしないまま驚きのあまり「ひぇ!?」と、変な声を発し立ち上がる。

そのために膝に乗せていたカバンがひっくり返り、カバンの中身が飛び出して、何枚かの紙が風で舞ってとんでしまう。

慌てて紙を追いかけるななか。

 

その一連のことを驚きつつ(しまったな、驚かせてしまった)と、申し訳なく思いつつ、紙を追いかけるななかの姿を目で追う。

が、すぐにななかのいたベンチの側へ行き、いまひっくり返したカバンやその中身を拾い上げる。

 

女の子のカバンの中身をジロジロとみるのはよくない、蒼星はそう考えている。だからササッと拾い上げるて済ますつもりでいた。

が…その荷物の中に、自分の心を強く惹きつける物があった。

スナップボタンのついた書類用のクリアケース、中には蒼星のファントム姿のポストカードと、見覚えのあるレターセットと、小さな千代紙の小物が入っていた。

 

蒼星にはその小物が文香だとすぐにわかる。

今は香らないが、どんな香りなのかも知っている。

レターセットの封筒にはいつも金の箔紙でできたシールで封をされているのだが、それもどうやら入っている。

 

いけない、と思いながらも、まじまじとそのケースを眺めてしまう。

この便箋にはいつも同じ色のインクで、今回の役はどうだったとか、ソロシーンのあのあたりが好きだとか、そんなことをしたためてあり、演目が変わるたび、主演でも、そうでなくても、自分宛てに必ず届くファンレター。

 

ななかが戻って来る気配がある。

蒼星はそのケースを大事に抱え、ななかを見つめて待つ。

ななかも、蒼星の様子に何か気がついたのか、目を丸くしたり、後退りかけたり、目が泳いだりしている。

 

舞っていった紙は全てみつかったのかと蒼星は尋ねる…ななかは無言でうなずく。

次に荷物を見てしまったことをあやまり、ななかはやっぱり無言でうなずく。

 

「あのファンレター…君だったんだね」

「……」

 

しばらく、お互い言葉がでない。

 

「俺、生まれて初めてもらったファンレターを今も大事にとってあるんだよ。」

「…?」

「薄いブルーの便箋でね、ブルーのインクで『はじめてあなたの声を聞いたとき、この中の、どの人がこの素晴らしい声で歌っているのかと思っていました』…って、書いていたんだ。

その人はね、まだ役名どころか村人なんてポジションすらない、その他大勢のバックで歌って踊ってただけの頃から、俺の声を聞き分けられたんだって。

それで俺が大衆のなかから一人躍り出て、セリフを言った時に、この人だって、気がついたって。

…すごいよね…すごく嬉しくてさ、しかもそのあとにもたくさん俺のいいところを書いてくれて……その時の『人に喜んでもらえた』って嬉しい気持ちを忘れないようにって、それで…それ以来、そのファンレターは俺の宝物なんだ。」

 

そう、一気に言って、ななかの顔を見つめ直す。

ななかはぽかんとしていて、蒼星の顔をただみている。

 

「でね、実はその人かららしきファンレターは全部とってあるんだよ…なにか、いつも元気をもらえる気がしてさ。あの人が見てくれた、また褒めてくれた…俺はまだやれるんだ!って気持ちになって……響也なんかは『ファンレターの君』なんて言ってからかうんだけどさ…差出人の名前がいつも書かれていなくてね、それでなんだけど…って、ごめん、俺喋りすぎたね。…ケース、返すね。」

 

蒼星が畳み掛けるように喋る間に、蒼星の言葉の意味をゆっくりながら理解したななか。

蒼星がケースを手渡す時に耳まで赤くなり蒼星を見ることすらできなくなっていた。

手渡されたケースも、うつむいたまま受け取った。

 

そして、そのタイミングでななかのスマホのアラームが鳴る。

レッスンに向かわなければならなかった。

 f:id:tachi87a:20170202003711j:image

 

どうなかこうにか振り絞った声でそのことを蒼星に伝え、荷物を拾ってくれてありがとう、とそれしか言えなかった。

蒼星は少し名残惜しそうにして見えたが、ななかの向かう教室は近くかと尋ね、ななかがうなずき返し、ならば、そこまで送らせて欲しいと言った。

ななかは躊躇したのだが、蒼星の目を見ると断ることができなくなり、やっぱり無言でうなずき、教室まで一緒に歩く。

 

 

目的地について、さよらなと言ったあと、ななかは意を決して立ち去る蒼星の背に向かい大きな声で言った。

「これからも、お手紙書いてもいいですか」…と。

 

蒼星は驚いた顔で振り返り「もちろん!」と返し、すぐに満面の笑みに変わり「大歓迎だよ!」と続けた。

 

 

 

 

おわる。

 

ななかの地味ながらも重要な設定

f:id:tachi87a:20170202004155j:image