蒼い鳥の歌

夢キャスと橘蒼星さんと夢女子CP中心の二次妄想置場です。苦手な方はUターン!

【蒼なな?】虹の彼方に

突然の訃報に、ななかは自失寸前だった。

だけど、いま撮影しているこの仕事は朝日奈真がななかに用意した「ななかが演じてもいい初めての場所」だった。

だから泣いて撮影ができないなんてことにはしたくはなくて、必死で演じ、その日からは日を越えて、夜遅くに、両親とともに式場へ向かった。

 

 

響也は何がなんだかわからないまま、人にいわれるままに動きまわっていた。

する事がなくなるとどうすればいいかわからなくて、ただぼんやり座ったり、

蒼星が出すお茶を飲んでみたりしていた。

なにか考えようとしてみるけれど、何を考えたらいいのかわからない。

奇妙な夢のなかで、浮かんでいるような気持ちだった。

沢山の花に囲まれた父と母の写真が笑顔で並ぶ前で、暗い面持ちでやって来る人に挨拶をして、

だけど自分で何を言ってるのか、目の前の人がなんて言っているのかもよくわからない。

そして時の流れも、やけに遅く感じた。

 

 

ななかの一家が式場に着く。

ななかは両親とともに遺影の前まで歩いていく。

式場の手前で足が動かなくなる。

ななかの両親は先に響也の元へ向かっていた。

その、両親が向かった先に見えた響也の姿が、とても小さく感じる。

両親に気がついた響也がなにか言葉を発していたがよく聞こえない。

だけど、笑顔もなく、悲しんでいるのかもわからない。

ただ、いつもとは別人のように疲れきった顔をしている。

 

 

響也がななかのことに気がつく。

両親が響也に告げたのだろう。

ななかに視線を向けた、けれど、やはりその顔にチカラがない。

ななかも立ち尽くし、動けないでいた。

そうと知ってか知らずか、響也がななかにむかって歩いてくる。

ななかはどんな顔をしていいかわからなかったし、相変わらず足も動かない。

だけど、響也と見つめ合いながら、涙がこぼれてこぼれて仕方がなかった。

 

響也がななかのそばへ立ち 「…いこう」 と、優しい声で言う。

 

たぶん、朝日奈夫妻の棺の元へ行こうというのだろう。

戸惑ったが、響也の大きな手がななかの背にそっと触れてリードする。

ダンスの時のように、二人で並んで歩いた。

背すじをのばして、少し緊張して、身体は震えて。

 

それは響也も同じだった。

仲良く並ぶ棺の前で、二人は一度立ち止まる。

立ち止まって、そのまま二人、立ち尽くしてしまう。

響也もいまだ、二人の顔を見れないでいたらしい。

「俺も、まだ見てないんだ」と、少しかすれた声でななかに告げる。

 

それを聞いて、ななかは心を決めた。

響也の背に手を伸ばし、チカラを込める。

そして響也の顔を、瞳をじっと見つめて、歌い出した。

 

Somewhere over the rainbow

Way up high,
There's a land that I heard of
Once in a lullaby.

 

虹の彼方に

youtu.be

 

 

歌いながら、式場に並べられた椅子の間を縫って歩き出し、

背もたれを手で触れてみたり、座ったりして歌い続ける。

涙を流しても、声は揺るがない。

そして歌の途中、ななかは響也に手を差し伸べる。

(一緒に歌おう)そんな気持ちが込められていた。

 

響也はそれまでのななかの動きを目で追い続けていた、

ななかが歌い出したことで、心で何かが動いた気がして、

目が離せなかったのだ。

そして手を差し伸べられて、どんな気持ちも理屈もなくなって

一緒に歌い出していた。

 

 

歌いながら、一緒に振りをつけながら、いつの間にか響也の目にも

輝くものが浮かんでくる。

歌い終わって、まだ涙を流し続けるななかにしがみつき、

大きな声で、響也は泣いた。

 

 

この時、響也はようやく両親の死のことで泣くことができた。

少なくとも、それを会場の隅から見ていた蒼星にはそう思えた。

カンパニーはどうするのか、どうなるのか、参列者の中には、

そんな話しばかりしてくる人も多かった。

その度に響也は「これから考えます」と、

そうとしか言えなかったし、おちおち泣いてなんていられなかった。

 

心の整理もついていないのに、カンパニーの今後を迫られ、

警察の話しや葬儀の打ち合わせ、弁護士が来たり、税理士に連絡したり。

親戚、知り合い、仕事仲間への連絡…蒼星も出来る限りのサポートはしたつもりだが、最終的に今回の火中の栗を拾えるのは響也だけ。

たった半日のことなのに、すっかり憔悴しているのが見て取れた。

 

そしてひとしきり泣いたあと、響也とななかは

棺の中に眠っている、ふたりの亡骸と対面した。

 

しばらく静かに見つめていたふたり。

しっかりと肩を抱き合って、自分たちの原点となった人たちの死を悼んだ。

そして響也は蒼星のほうへ顔を向ける。

 

「蒼星、俺、やるよ。 カンパニーの主宰。」

 

疲れてはいたがしっかりとした面持ちで、チカラの戻った瞳で、

透き通るその声で、響也は確かに、蒼星を見つめてそう言った。

 

それを聞いて、蒼星は涙が流れるのをこらえられなかった。

思わず響也に駆け寄り、泣いて震えてしまう声で、

「響也がやるなら俺もやる! 手伝うよ、なんでも、お前を支えてみせる!」

無我夢中で叫ぶように、蒼星は響也に応え、ふたりは泣きながら

ぶつかるように抱きしめあった。

そして、蒼星はすぐに顔を上げ、ななかに向き直り泣いているのか

微笑んでいるのかわからない表情で「ありがとう」と、言った。

 

 

 

【蒼なな?】虹の彼方に おわり